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アラ還女sannigo(さんご)の映画鑑賞の日々を綴っています

少子高齢化に僅かな希望を探しているなら満75歳から生死を選べる制度『PLAN75』

こんにちはsannig(さんご)です。いつもありがとうございます。

今回の映画は、昭和世代の私にとって、いつまでも寅さんの妹さん「さくら」だと思っていたあの倍賞千恵子さんが主演の映画『PLAN75』です。

 

とある教授さんがおっしゃった、ちょいとシニア世代にはきびしい「高齢者は集団自決してはいかが」という声が物議を醸しています。

 

もちろん社会的地位のある皆さんがあまり主導権を握っちゃだめよ。という意味だとはわかっていますが、自決ということばがあまりにもストレート過ぎて。

 

少子高齢化の時代なのに、人生100年時代です。長く生きることが決して喜ばしいことではなく、むしろ若者を苦しめている自覚もあります。

 

今後老いていく一方の私は、具体的には「どうしたらええんじゃ~」って感じ。自決って言われても方法がわからんし・・・。

 

そこへタイミングよく倍賞千恵子の日本アカデミー賞受賞で知った『PLAN75』、75歳になると自身で生か死かを選べるという時代の話と知り、これはどういったプランなのかしら?もしかしてこのプランが実現したら、極貧の私でも安心して75歳でしねるのかしら!?

 

近い将来75歳になる予定のアラ還世代に、何かしら答えをくれるのでは?と期待しつつAmazonプライムで見たのがこの映画でした。まずはいつもの映画.comの評価と解説から始めましょう。

 

少子高齢化に僅かな希望を探しているなら満75歳から生死を選べる制度『PLAN75』

 

 

映画『PLAN75』

 

PLAN75

PLAN75

  • 倍賞千恵子
Amazon

 

映画.comの評価


☆3.6

 

解説

 

これが長編デビュー作となる早川千絵監督が、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編として発表した短編「PLAN75」を自ら長編化。

 

75歳以上が自ら生死を選択できる制度が施行された近未来の日本を舞台に、その制度に翻弄される人々の行く末を描く。

 

少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。

 

満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れられた。

 

夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう。

 

住む場所も失いそうになった彼女は、「プラン75」の申請を検討し始める。

 

一方、市役所の「プラン75」申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)、死を選んだお年寄りにその日が来るまでサポートするコールセンタースタッフの瑶子らは、「プラン75」という制度の在り方に疑問を抱くようになる。

 

年齢による命の線引きというセンセーショナルな題材を細やかな演出とともに描き、初長編監督作にして第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。

 

初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャルメンション(次点)に選ばれた。

 

ミチ役で倍賞千恵子が主演。磯村勇斗、たかお鷹、河合優実らが共演する。

 

2022年製作/112分/G/日本・フランス・フィリピン・カタール合作
配給:ハピネットファントム・スタジオ

 

オフィシャルサイト:映画『PLAN 75』公式サイト

 

スタッフ

 

監督:早川千絵
脚本:早川千絵
脚本協力:ジェイソン・グレイ
エグゼクティブプロデューサー:
小西啓介 水野詠子 國實瑞惠 石垣裕之 フレデリック・コルベス ウィルフレッド・マナラング
プロデューサー:
水野詠子 ジェイソン・グレイ フレデリック・コルベス マエバ・サビニエン

 

キャスト

 

角谷ミチ:倍賞千恵子

岡部ヒロム:磯村勇斗

岡部幸夫:たかお鷹

成宮瑶子:河合優実

マリア:ステファニー・アリアン

牧稲子:大方斐紗子

藤丸釜足:串田和美

 

【受賞歴】


・第46回 日本アカデミー賞(2023年)

[ノミネート]
最優秀脚本賞    早川千絵
最優秀主演女優賞    倍賞千恵子

・第75回 カンヌ国際映画祭(2022年)

[受賞]    
カメラドール(新人監督賞)
スペシャル・メンション    早川千絵

[出品]    
ある視点部門
出品作品    早川千絵

参照元:PLAN 75 : 作品情報 - 映画.com

 

私の勝手な評価

 

☆4.3

 

年代的にもパンとはまるテーマでした。これまで、少子高齢化の根本要因であろうといわ続けてきた年代で、これから年を重ねることに何一つ希望が持てないような気分でしたが、僅かな希望が見つかった気がする映画でした。

 

私の勝手な感想

 

まずは、『PLAN75』を見たきっかけは、日本のアカデミー賞で倍賞千恵子さんが主演女優賞を受賞した作品として知り、決して第75回カンヌ国際映画祭でカメラドール特別表彰され、世界的に高い評価を受けていたことを知ったからではないことを先に記しておきます。入口がちがうと感想も若干ちがってきますものね。

 

この映画を見ている間、最初から最後まで私はずっと考えていました。私だったらどうする?って。死を選べる時代になったら素直に死を選ぶのだろうかと。

 

映画の中の少子高齢化がさらに進む近未来の日本では、75歳以上の高齢者が自分から死を選択でき、国が支援する制度”プラン75”が運用されています。というのも、少子高齢化の歪みから高齢者を襲うなどの犯罪が増えたことへの対策でもあります。

 

「なんでもあり」と称される昭和生まれの私にとって、最近の世の中はなんだか窮屈で、何もかもが四角四面。

 

現在の不寛容な世の中のまま年月が流れれば、もっと不寛容でこの映画のように高齢者を襲う人びとも多くなるだろうし、弱者はもっと暮らしづらくなるだろうと予想できます。

 

”プラン75”は民間ならではの、高額なら旅行先で豪華に過ごしたのちに最期を迎え、きちんと葬り供養まで請け負うプランから、申請すると10万円で好きなものを食べるなり、旅行に出かけるなり自由に使え、民間の施設で多数の人びとと最期を迎えられ、多数の人と一緒に葬ってくれ、住んでいた部屋も片付けてくれるプランなどいろいろ用意されています。

 

最初に登場した夫と死別しつつましく暮らす78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、落ち着いた様子でホテルの客室掃除を淡々とこなしています。同じような年齢の方も一緒に働いています。

 

どこかで転んで怪我しないかな?重いものを持って腰は大丈夫かな?と心配しつつ、78歳でもきちんと仕事をこなしているなんてすごい!やっぱり筋金入りだ!とも思う自分。

 

そこで、2022年の高齢者人口や就業状況について公表されている数字を見てみましょう。2022年の高齢者人口は3,627万人で過去最多を更新、総人口に占める割合も29.1%で過去最高だそうです。

 

さらに2021年高齢者(65歳以上)の就労率は909万人でこちらも過去最高。そして、問題なのは高齢者人口のうち75歳以上の人口が1,937万人で、前年から72万人増加、さらに総人口に占める割合も0.6ポイントアップの15.5%で初めて15%超えました。

 

総務省によると、これは「団塊の世代」の皆さまが2022年から75歳を迎え始めた影響といいます。

 

現在の高齢者の就労率のアップは、この「団塊の世代」の皆さまが、戦争での敗北から奇跡的な復興を実現させ現在のような日本にするためには、勤勉かつ寝る間を惜しみ、家庭を振り返らずに頑張ってきたこととかなり関係があると個人的に思っています。

 

というのも、そんなすごい事をなしえた「団塊の世代」の皆さまが、黙ってテレビの前でだとか、グランドゴルフ、老人会などで楽しく老後を過ごせるわけがないのです。

 

いつだって変化に対応し変革しアレンジしつつ、チャレンジし続け、自らの幸せを二の次に考えて日本のためにがんばってきた世代の皆さまですもの。75歳になったってチャレンジあるのみ、働けるうちは働いて世の中のために尽くすのが当たり前とお考えの勤勉な皆さまだからではないでしょうか?だから筋金入りだと。

 

いや!これは近未来の映画だから、この働いている皆さんは私達の世代か、もしくはもっと若い世代の皆さんが78歳になった姿かも!?と思うと、「いやいや!私なら78歳で働くのはムリ」ってなってしまったのです。

 

そこで考えた言い訳が今働いている高齢者は団塊の世代だから、ということで、ここまでくどくどと現在の高齢者の人口や就業状況を載せてしまいました。

 

映画に話を戻しましょう。職場と余興の時間もあり順調に見えたミチの生活ですが、ある日、ミチの同僚が就労中に倒れたような描写があり、ミチたちは高齢を理由に清掃の仕事を解雇されます。

 

仕事を探しても高齢を理由に断られ、ようやく就けた仕事は夜中の交通整理。ヘルメットをかぶり、ピカピカと点灯する制服を着、右に左にライトを振り車を整理するミチ、途中さすがに疲れたのかガードレールにより架かったりするのも当たり前です。

 

部屋を探そうにも4件の不動産屋で断られ、5件目の親切な担当者が頼んでくれても「2年分の家賃を前払いするなら」との条件付き。もちろんそんなお金のないミチはあきらめます。

 

そして、職場で仲が良かったらしい高齢の女性たちとの縁もしだいに薄くなり、”プラン75”の申請を考え始め、訪ねた先で会ったのが”プラン75”の申請窓口で働く岡部ヒロム(磯村勇斗)。

 

この岡部ヒロム青年、申請にくる人びとに丁寧で優しく接することができる好青年。番号札を持ち順番待ちしているのに、番号を呼ばれても気づかない高齢の男性に優しく声を掛け、立ち上がることも難儀な様子を見て、静かに車椅子を用意します。

 

さらに優しく車椅子へ誘導し、「足を上げてもらえますか」と操作まで完璧にできるところがミソ。”プラン75”なんて野蛮とも思える政策の担当者とは思えないほど、常にフラットな状態で、決して感情を乱さない人物。これじゃあ、申請する側も「仕方ない」と諦めがつきそう。

 

一方、介護施設らしきところで働くフィリピン女性マリア(ステファニー・アリアン)が登場します。彼女の子どもさんが手術をしないと治らない病を抱えているようで、仲間に寄付を募ったりして、必死で子供のために生きています。

 

そこで、紹介されたもっと稼げる仕事がこの”プラン75”に関わる仕事でした。彼女は淡々と”プラン75”で亡くなった方たちのボディをチェックし、腕時計やアクセサリを外していきます。ある時、一緒に働く男性がブレスレットのようなものを彼女に差し出します。

 

「使うといいよ」とでも言ったのでしょうか?マリアは「No thank you」と断りますが、「死者を忘れてはいけない。持ち主はもう使うことができない。使える人が使ってやれば物も喜ぶ」と話し受け取らせます。

 

このシーンから感じたのは、”プラン75”に関する仕事をしている人たちも、合理的な死に方を選んだ人に対しての誠意を持っているし、人への思いやりにあふれている。決して好き好んでこの仕事をしているわけではないということ。それでも子供のためであったり、生きるのに必要なお金を稼ぐために働いているということ。

 

さらに、申請窓口で働く岡部ヒロム青年にも思いもかけないことが起きます。出張窓口でも設けたのでしょう。申請を承るテントの看板に何かの液体が掛けられます。が、フラットなヒロム青年は慌てず、騒がず申請受付延期の処理をこなします。

 

そこで、見かけたのが父親の葬儀にも出席しなかった叔父の岡部幸夫(たかお鷹)です。もちろん”フラット75”の申請に訪れていました。

 

やはり、あまりご縁はなかったにしろ肉親の申請には心穏やかでなかったのかヒロム青年は叔父の家を訪ねます。さっぱりとした部屋で見つけた何枚もの献血カード。おじさんは全国を回ってダムなどの建築に携わっていたことをぼそっと話します。

 

ミチもその日が近づくに連れ、”フラット75”のサービスで相談相手にいろんな話を電話を聞いてもらえることに。そこでの相談相手が成宮瑶子(河合優実)。

 

何でもきちんと向き合って聞いてくれる瑶子にミチは気を許し、電話の時間が楽しみになってきます。ミチは最期の時期も近くなり、瑶子に一緒に出かけてくれないかと頼みます。

 

そこは2度めのご主人と出かけた思い出の場所で、クリームソーダ(メロンソーダだったかも)を飲みたかったと話すミチに、瑶子はボーリングをすすめ一緒にプレイすることに。ここでのミチの笑顔はとても印象的でキラキラしていて年齢を感じさせないものでした。

 

普段のミチの行動のすべてには少し深い息遣いが感じられ、年齢なりの疲れや体力の低下などを感じさせるものでした。ところが、ボーリングしている時は感じなかったのが不思議!

 

そして、いよいよ静かに流れる”プラン75”の時間の中で、ようやくラスト近くにわずかに希望が溢れ出してきます。きっと視聴者の多くはこの僅かな希望が少しでも長く続くことを祈ったのではないだろうかと思います。

 

私も気付いてはいなかったものの、”プラン75”を見たいと感じたのは、きっとこの僅かな希望を探していたからだろうと気づきました。

 

この映画を見るのは高齢者はもちろんですが、まだ現役だけど老いることに恐怖や不安を感じている皆さんが見る映画だと感じます。

 

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最後までお読みいただきありがとうございます。では、またお会いしましょう。