こんにちはsannigo(さんご)です。いつもありがとうございます。
今回の映画鑑賞は芥川賞候補に何度もあがったのに残念ながら受賞することなく、41歳の若さでこの世を去った小説家佐藤泰志氏の唯一の長編小説を、主演を綾野剛、共演に池脇千鶴、菅田将暉で映画化された『そこのみにて光輝く』です。
綾野剛といえば、2020年TBSで放送されたドラマ『MIU404』ではダブル主演の星野源が演じた過去にトラウマを持つ堅物刑事志摩と、綾野剛演じる警察官としての常識には欠けるものの走るのが早くポップな感じで事件を解決していく志摩との相棒役で盛り上がったドラマがよく知られています。
さらに、同じくTBSの2015年~放送の『コウノドリ』シリーズでは、主人公の医師であり謎のジャズピアニストでもある鴻鳥サクラ役を演じ、そのもじゃもじゃなヘアスタイルと医師でありながらジャズピアノも一流、年齢経歴は不明だけど児童養護施設で育ったことだけは知られているというなんとも不思議な魅力が話題にもなりました。
映画では2021年『閉鎖病棟』で、鶴瓶師匠との共演でちょっと今回ご紹介する映画 『そこのみにて光輝く』に似た感じの伏目がちな青年を演じています。
さらに綾野剛と言えば、『日本で一番悪い奴ら』などで演じる一連のかなり悪い感じもよく似合います。※残念ながら「仮面ライダーW」は見ていません。
映画.comの口コミ評価では☆3.8の映画『そこのみにて光輝く』、さっそく映画.comの解説から始めましょう。
そこのみにて光輝く
映画.comの評価
☆3.8
解説
芥川賞候補に幾度も名を連ねながら受賞がかなわず、41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の唯一の長編小説を、綾野剛の主演で映画化。
「オカンの嫁入り」の呉美保監督がメガホンをとり、愛を捨てた男と愛を諦めた女の出会いを描く。
あらすじ
仕事を辞め何もせずブラブラと過ごしていた佐藤達夫(綾野剛)は、気が荒いが人懐こい青年大城拓児(菅田将暉)とパチンコ屋でライターを貸し借りしたことで知り合う。
フレンドリーな拓児について来るよう案内された先には、時代に取り残されたように存在する一軒のバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母、水商売で一家を支える姉の千夏(池脇千鶴)がいた。
世間からさげすまれたその場所で、ひとり光輝く千夏に達夫はひかれていく。
拓児の応援もあってかお互いに思い合うようになり、ついに二人は太陽の光がまばゆい海で結ばれる。
ところが、ある日達夫は衝撃的な事実を知ることになり、事件へとつながっていく。
2014年製作/120分/R15+/日本
配給:東京テアトル
ジャンル:ドラマ
【スタッフ】
監督
呉美保
原作
佐藤泰志
脚本
高田亮
【キャスト】
藤達夫:綾野剛
大城千夏:池脇千鶴
大城拓児:菅田将暉
社長:高橋和也
火野正平
伊佐山ひろ子
田村泰二郎
【受賞歴】
第38回 日本アカデミー賞(2015年)
[ノミネート]
優秀主演女優賞 池脇千鶴
「そこのみにて光輝く」を見ての勝手な感想
sannigoの評価
☆3.6
函館で小さなアパートで暮らす働き盛りと思われる達夫(綾野)は、日々仕事に出かけるわけでなく、散歩とパチンコで時間を費やす、ある意味あこがれる暮らしぶり。
ムショ帰りにしては割と真面目そうだし、どうして仕事をしていないのかしら?と思いながら見ていると、ある日パチンコ屋でめっぽう陽気な拓児(菅田)とライターの貸し借りから知り合う。
パチンコ屋に行った経験が60年近い人生で2回くらしかない私にとって、パチンコ屋っていうのはそんなにすぐに友達ができるものなのか?とびっくりするスピードで、達夫は拓児の家にまで招待されてしまう。(拓児のあまりにもフレンドリーな感じはやっぱり菅田将暉でないと出ないよね!と感じる場面です)
拓児の自転車に誘導され達夫がたどり着いた家は、底抜けに明るい拓児と対象的な「豊かな現在も存在していいいのだろうか?」と思うようなバラック小屋。
そこで出会ったのが拓児の姉千夏(池脇)。
バラック小屋には認知症のせいか?性欲を抑えられずにうめき声をあげ続ける父親、その父親の面倒をみている母親がいる。
千夏は、刑務所から仮釈放で働いてる弟拓児のためそこの社長とも関係を結び、さらに母親が疲れて眠っていれば父親の性欲を抑えることまで、家族のために体を売ってまでお金を稼ぎ家族のために尽くしている。
山の仕事で心に深い傷を負い毎日ブラブラ過ごしている達夫の目には、こんなに胸が締め付けられるような日々をなんともアッケラカンとこなしている千夏はどんな風に映ったんだろう。
きっと眩しく感じたことだろう。千夏は毎日ブラブラと過ごしている達夫をどう思ったんだろうか?何かしら原因があって、本来の仕事ができないのだろうとか。
まあ、そんなことを感じる前にすでに達夫の魅力に参っていたのかもしれないが、すぐに二人は透明に近いブルーの海中で、一時だけ都合に悪いすべてのことを忘れて結ばれる。
このシーンだけは、二人ともこの映画内で描かれている大半の胸が締め付けられるような日常から放たれた別世界。
海中で戯れる二人に差しこむ太陽の光だったり、やさしくうねる流れだったり、映画を見ている私にとっても心穏やかに過ごせる時間だった。
そして、二人にとっては少しだけ「希望の光」が見えた瞬間だったのかも・・・。
その「希望の光」に向かって、二人は少しずつ現状の自分たち、さらに千夏の家族の苦しい生活を変えようともがき始める。
千夏は体を売ることをやめ、拓児がお世話になっているためなかなか切ることができなかった社長との体の関係を切ろうとした。
達夫は一緒に山で働きたいという拓児とともに、大きな心の傷を負った山での仕事を再開させようとした。
だけども、簡単にいくはずもなく幾度となく事件が起こり、その都度達夫と千夏の愛の形も変わりながら、やがて新しい家族へとつながっていく。
どんなに不条理な現実があろうとも、いつか何かをきっかけに現状は少しずつ好転していく可能性があると感じることができた映画。
ただ、千夏の家族がもし現在の介護保険、さらに福祉をもっと知っていてもらえたら、このような胸を締め付けるような暮らしをしなくても良かったのでは!?と思う。
けれども、拓児のように問題のある家族がいることで、社会との接点が失われている場合はこうならざるを得ないのか。これが現状なのかと思うと不条理にムカつく。
ラストはこれからは明るい方向へ向かうのだろう!と思えるのだけど、生きづらい世の中を目の当たりにした感じで、ちょっとジョーカーを見たあとと同じような気持ちになってしまった。
関連記事>>
帚木蓬生原作の小説「閉鎖病棟」は映画になっても優しさがあふれている - movies-sannigo's blog
菅田将暉について思うこと
まず一番に感じたことは、菅田将暉の演技がこの「そこのみにて光輝く」で演じる拓児と現在放送中の「大河ドラマ」鎌倉殿の13人で演じる源義経には同じような荒っぽくはあるけど親しみやすさ、フレンドリーさ、人懐こさなど共通点があること。
よく考えてみたらドラマで言うと、月9「ミステリと言う勿れ」で演じた久能整、第37回日本アカデミー新人賞を受賞した作品「共喰い」、日テレの「コントが始まる」、ヒットドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」ちょっと飛んでNHK「大河ドラマ」おんな城主直虎。
映画で言うと「花束みたいな恋をした」「浅田家」「糸」「アルキメデスの大戦」「火花」などにも、やはり親しみやすさ、フレンドリーさ、人懐こさで溢れている気がする。
これって、もしかしたら本来の菅田将暉の人柄が下地にあるからこそ、どんな役を演じるときもにじみ出てしまうんだろうなってこと。きっと両親から愛されて育った子供なんだろうな。
そもそも役者の持つ人柄というか背負っている人生、生き方、思いなんかが演じる役にそっくり出てしまうという典型なような気がして、これからの菅田将暉が演じる役が楽しみで仕方ない。
綾野剛について思うこと
今夏のTBSの日曜劇場『オールドルーキー』で主演が決まっている綾野剛さん。すでに撮影も始まっているとか。
日曜劇場といえば歴代『天国と地獄〜サイコな2人〜』『半沢直樹』『テセウスの船』『日本沈没』などとすごい視聴率を誇るドラマが揃っているのは誰もがご存知のこと。
そして、現在放送中の二宮和也主演の『マイファミリー』は、多部未華子、賀来賢人、濱田岳、高橋メアリージュンなどの共演者の演技力やチーム力に支えられ、今季No1.の視聴率と話題。
綾野剛さんも応援してくれている二宮さんが言うには、「視聴率は気になるけど、作品には関係ない」と。
ですから、梅雨から真夏へと体調が崩れやすい季節で大変かと思われます。が、視聴率なんかは気にしませんから、毎週見逃したくなくなるようなすばらしい作品を期待しています。
\見逃した映画を見るなら/
関連記事>>
映画「楽園」を見ることで、田舎への移住をあきらめたくなっちゃうかもね - movies-sannigo's blog
池脇千鶴と高橋和也について思うこと
池脇千鶴はこれまでも映画ではかなり振り切った演技をしていらっしゃるので、特別びっくりしたと印象はないけど、やはり思い切りの良さが演技にもしっかりと出ている感じで、これ以上にない不条理とか演じたらNo.1かもしれないと思っている女優さん。
今回キャストで一番ビックリしたのが高橋和也。私が見たドラマ・映画ではいつもやさしいお父さん役だったせいか、人間の隠すことのできない本性が出ている役を見るのが初めてでドキドキしてしまった。
こんなにすごい役者さんだったんだと再認識したところ。なぜなら、高橋和也さんが演じるところの社長さんには、「こんな人いるんだよね。しかも多いんだよ。でも、仕方ないよね。」って感じられ、何より嫌な気分にはならなかったところがさすが!
最後までお読みいただきありがとうございます。では、またお会いしましょう。